2013年2月 6日 (水)

中谷比佐子著
『きものごよみ365日 春』
発売開始しました!

きもの文化研究家の中谷比佐子さんの『きものごよ365日 春』を『きものごよみ365日 冬』に続いて発売開始いたしました。
この書籍は電子版のみで紙での発売はありません。

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長年にわたり雑誌を始めとする多メディアで仕事をしてきた著者ならではのきものに対する知識は読んで楽しく、またきものの着方などを軽いエッセイを通して身につけることもできます。

発売は書店によって異なりますので、こちらから順次お知らせしてまいります。

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2012年11月16日 (金)

中谷比佐子著
『きものごよみ三六五日 冬』
著者略歴&立読み版

書名: 『きものごよみ三六五日 冬』
価格: 300円

発売日 2012年11月下旬

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著者 中谷比佐子
きものの世界で幅広く活躍する中谷比佐子さんの人気ブログの電子書籍化です。
以後、春編、夏編、秋編と刊行予定。

<<<<立読みコーナー>>>

立読み版(PDF形式)は、まえがきと目次、そして「一月一〇日 雪持ちの柄」です。

『きものごよみ三六五日 冬』【立読み版】

<<<各電子書店へのリンクは左サイドにあります。書店と端末ディバイスの対応表をご確認の上、書店をお選びください。>>>

なお、AmazonのKindle本での扱いも始まっております。

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2012年8月19日 (日)

日本人の喫緊の課題は、メディアリテラシーを上げること

いま、大変な話題になっている『戦後史の正体』という本は、ご存じの方も多いと思います。
著者は孫崎亨(まごさき・うける)氏。元は外務省の官僚で駐ウズベキスタン大使、駐イラン大使の他、国際情報局長も歴任されています。外務省退官後は防衛大学校教授も務められた、要するにバリバリの官僚だったわけですが、この方が「アメリカからの圧力」という視点から戦後史を見直すという、これまでになかったまったく新しい史観を提示しています。その事実の一つひとつが目からウロコといった内容です。
孫崎氏はこう書きます。

 

戦後の日本外交を動かしてきた最大の原動力は、米国から加えられる圧力と、それに対する「自主」路線と「追随」路線のせめぎ合い、相克だったということです。

「対米追随」路線と「自主」路線、もっと強い言葉でいえば「対米従属」路線と「自主」路線、このふたつのあいだでどのような選択をするかが、つまりは戦後の日米外交だったと言えます。

孫崎氏は、「米国からの圧力や裏工作は、現実に存在します」と断言し、歴代政権を対米というスタンスから評価すると、驚くことに「自主」路線をとろうとした政権は、ことごとく潰されているのです(首相ではありませんが、小沢一郎もその系譜に連なります)。
では、いかなる手段を講じて、アメリカは日本の「自主」路線政権を潰すのでしょうか?

 ここで指摘しておきたいのは、占領期以降、日本社会のなかに「自主派」の首相をひきずりおろし、「対米追随派」にすげかえるためのシステムが埋め込まれているということです。  一つは検察です。なかでも特捜部はしばしば政治家を起訴してきました。この特捜部の前身はGHQの指揮下にあった「隠匿退蔵物資事件捜査部」です。終戦直後、日本人が隠した「お宝」を探しだしGHQに差しだすのがその役目でした。したがって検察特捜部は、創設当初からどの組織よりも米国と密接な関係を維持してきました。
 次のに報道です。米国は政治を運営するなかでマスコミの役割を強く認識しています。占領期から今日まで、米国は日本の大手マスコミのなかに、「米国と特別な関係をもつ人びと」を育成してきました。占領時代はしかたがなかったかもしれません。しかし今日もまだ続いているのは異常です。

 そして孫崎氏はこう書きます。

 この六つのパターン(※筆者注 この直前に記された自主派の政治家をひきずりおろす六つのパターン)のいずれにおいても、大手マスコミが連動して、それぞれの首相に反対する強力なキャンペーンを行なっています。今回、戦後七〇年の歴史をふり返ってみて、改めてマスコミが日本の政変に深く関与している事実を知りました。
 このように米国は、好ましくないと思う日本の首相を、いくつかのシステムを駆使して排除することができます。難しいことではありません。たとえば米国の大統領が日本の首相となかなか会ってくれず、そのことを大手メディアが問題にすれば、それだけで政権はもちません。それが日本の現実なのです。

私は『戦後史の正体』を読んだ直後に、読売新聞政治部著による『民主党 迷走と裏切りの300日』という本を読みました。この本は2009年の政権交代後の鳩山政権が、普天間移設問題で「迷走」し、小沢一郎を「道連れ」に退陣するまでの300日の記録ですが、その中身はひと言で言えば、鳩山由紀夫と小沢に対するあらん限りの罵倒です。
米国の意向、日米関係の安定(要するにアメリカのご機嫌を損ねないこと)を金科玉条として鳩山の「迷走」(実は「クソ粘り」)を糾弾する一方、東京地検特捜部の捜査によって秘書を逮捕された小沢に対しては「政治とカネという問題を抱えた選挙至上主義の独裁者」というレッテルを貼りつけ、これまた糾弾します(ちなみに小沢一郎をめぐるこの事件は、もはや東京地検の捏造であることはハッキリしています)。
孫崎氏が書かれた通りの動きを読売新聞政治部はしています(ちなみに読売新聞中興の祖である正力松太郎はCIAの協力者だったことは、アメリカの公文書にはっきりと書かれています)。

私はこの二冊を読んで、丸山邦男著『遊撃的マスコミ論 オピニオン・ジャーナリズムの構造』(弊社刊)の「ジャーナリズムと戦争責任」の以下のフレーズを思い出しました。

「今日において新聞を引っくるめてマス・コミの勢力は、ある意味で政治以上に強力であるということができる。マス・コミが協力すれば、一政権を倒すぐらいは易々たるものであるが、政治の力では、右にせよ左にせよ、ファシズム的専制政治が出現しない限り、一新聞を倒すこともできないであろう」(阿部真之助「民衆が自由を支配する」)
 こういう事実を正しく指摘する人は案外すくない。マス・コミが独自の権力機構を形成しつつ、社会の既成支配権力──政府・官僚・財閥──に拮抗し、一つの支配権力を優に凌駕する実力を貯えてきているといういい方は、けっして誇大な表現ではない。

私は最近、改めて、かつ強く、現在の日本の最大の問題はマスメディアであると思います。
この国には福島第一原発をはじめとして、さまざまに困難な問題が山積しているわけですが、その一つ一つを正しい方向で解決していくためには、まずもって国民一人一人が自身のメディア・リテラシーを上げること、言い換えればマスコミ報道を鵜呑みせず、自らの頭でニュースを読み解く力をつけることがもっとも重要ではないでしょうか?

その参考図書として、ご紹介した『遊撃的マスコミ論 オピニオン・ジャーナリズムの構造』、あるいは岡庭昇氏のシリーズを是非、ご一読いただければと思う次第です。

孫崎亨氏のtwitterは→こちら
※私の知り合いは、何かニュースがあると、まず「孫崎さんはどう考えているか」をツイッターで見るといいます。それを聞いてから、私も同じようにしています。ちなみに現時点での孫崎さんの最新のつぶやきは尖閣諸島と原発です。

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2012年8月12日 (日)

丸山邦男著
『遊撃的マスコミ論 オピニオン・ジャーナリズムの構造』
発売開始しました!

丸山邦男著、『遊撃的マスコミ論 オピニオン・ジャーナリズムの構造』を発売開始しました。
本書は1976年刊行の書籍を電子版として再編集し、新たに著者の論壇デビュー論文である「ジャーナリズムと戦争責任」(1957年2月『中央公論』)を収録しております。

すでに発売から35年以上たった書籍ですが、今日のマスメディア総崩れの状況は、実はすでに当時から始まっており、何も変わっていないということがよくわかります。
著者は政治学者・丸山真男の実弟です。

以下、主な電子書店の購入先リンクです。

紀伊國屋kinoppy

ソニーリーダーストア

ボイジャーBinB store

※ボイジャーは今回よりBinBでの刊行となります。BinBシステムとは、電子書籍を読むためのアプリケーションが必要なく、ブラウザ上で電子書籍を読むことができる新しいシステムです(タブレットやスマートフォンでもOK)。
立読み版は上記リンクよりご覧いただけます(とてもきれいに表示されます)。

honto

GALAPAGOS STORE

その他、書店のリンク先は当ページ左の電子書店リンクよりご覧ください。

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2012年7月21日 (土)

お知らせ その1 ~ 新刊のご案内

長らく当ページを更新できませんでしたが、本日より再開いたします。
そこでお知らせを2ついたします。

まずは新刊のご案内です。
8月上旬に以下のタイトルをリリースいたします。

タイトル: 『遊撃的マスコミ論 ~ オピニオン・ジャーナリズムの構造』
著者: 丸山邦男

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本書は1976年、創樹社より刊行されましたが、電子化にあたり、章の構成を見直し、また新たに著者のデビュー論文で単行本未収録の「ジャーナリストと戦争責任」(1957年2月『中央公論』)を収録しています。

著者の丸山邦男氏は政治学者・丸山真男の実弟です。

以下は本書の構成です。

第一章 ジャーナリストと戦争責任

第二章 権威ある虚像と実像──遊撃的人物論
       石原慎太郎

第三章 憂さの構造──遊撃的マスコミ論
       誤報・虚報・無報
       オピニオンがつくられるジャーナリズムの論理と構造
       醜聞はマスコミのタブーか
       一人称不在の〈狂気社会〉
       内ゲバとリンチの論理
       「党派的革命運動」の頽廃について
       憂さの構造
       “新潮ニヒリズム”の正体

第四章 現代的天皇制──遊撃的天皇論
       三島精神・企業天皇制
       象徴神話の虚構
       天皇観の変遷と庶民の三十年
       「昭和」の元号のすすめ
       平均的庶民から裕仁陛下への直訴状

 あとがき

以上となります。
前述のとおり、1974年刊行と古い本ですが、一読すると、現在のマス・メディアが抱える問題点が、ほとんどすべてと言っていいほど出尽くしていることに読者は驚かれることと思います。
どうぞご期待下さい。

なお、各電子書店での発売予定は決定次第、御報告いたします。

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2012年4月15日 (日)

大泉黒石著
『山の人生 上』
著者略歴&立読み版

書名: 『山の人生 上』
価格: 525円

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著者: 大泉黒石(おおいずみ・こくせき/1893-1957)
    ⇒ウィキペディア「大泉黒石

<<<<立読みコーナー>>>

立読み版は、目次と本文の三節目にあたる「谷底の絃歌」です。
PDF立読み版の下に、テキストの立読み版もあります。
※PDF版は画面左下「Scribd.の右隣りにあるアイコン[view in fullscreen]のアイコンをクリックすると拡大されます(画面を元に戻す時には、[Exit Fullscreen]をクリックしてください)。
文字は画面下の「+-ボタン」で拡大縮小します。ただしリフロー(スクロールしないで画面の範囲内で文字拡大していくこと)はしません。

<<<各電子書店へのリンクは左サイドにあります。書店と端末ディバイスの対応表をご確認の上、書店をお選びください。>>>

立読み版『山の人生 上』

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【立読み版】

山の人生 上

大泉黒石

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  目  次

上越アルプス──三国山塊の横顔──
紅葉の中をゆく──片品川渓谷──
谷底の絃歌
銀山平の今昔
駒鳥の唄──鬼怒川渓谷──
六字の題目
秋の夜の旅
雪の中の浮世
雪橇は走る
利根の深渓──湯の小屋の一夜──
石塔を剃る──狸を食うまで譚──
鷲の復讐
蝮の缶詰

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  谷底の絃歌

 上州と岩代の国境尾瀬沼(おぜぬま)からの帰りだった。片品川渓谷老神(おいがみ)温泉、白雲閣の湯槽(ゆぶね)に浸りながら、私の道連(みちづ)れは、山の怪奇について各自の経験を語合うのだった。この道連れというのは、東京から来た登山家で、私とは片品川渓谷で知合ったのである。こういったのは私、
「これも山の怪異というものでしょうか、国立公園候補地になっている尾瀬沼」
「知っています」
「あれから沼山(ぬまやま)峠を越えて東へ一里の山中に、矢櫃平(やびつだいら)といって、摺鉢の底みたような熊笹の原がある。ここは源義家に追われた安部惟任(あベこれとう)一族が、はるばる奥州から利根へ逃げ込むときに、矢櫃、鎧櫃(よろいびつ)などを埋匿(まいとく)したというので、矢櫃平の名称があるんだそうですがね。不思議なことは、只今でもこの笹原に足踏み入れると、方角の見当がつかなくなって、立往生する。御承知の通り、山の中で頼りになるものは地図でしょう。それがですよ。持っている地図の文字や線が消えてしまって、いつの間にやら、白紙になっている。だからどちらへ行ったらいいか、サッパリわからず、迷いに迷いながら、やっとのことで笹原を脱け出て見ると、また、いつの間にやら元の地図になっているんだそうです」
「ほう。本当ですか?」
「さあ。どうですかなあ。そういう話を知っておれば、尾瀬沼を訪ねついでに、行ってみるんでしたが、山を下ってから聞いたので、本当か嘘かわかりません。山の人たち……樵夫(きこり)や炭焼などの説によると、これは正しく滅亡した安部一族の幽魂、ここに留まって、埋めし宝を護るためになす業である、というている。怖れて近づかないそうです」
「しかしこういうことがあります。私の知っている山の温泉宿の二階座敷に、近ごろ女の幽霊が出たり、真夜中になると、床の下から嬰児(あかご)の泣声がきこえる、という噂が立ったんです」
「なるほど」
「噂は段々ひろがって、その土地の新聞にまで書立てられるほど、有名になった。温泉場の人たちの話によると、その温泉宿は、もと部落の者の墓地だったところへ建てたんだそうで、墓地の持主の娘が旅(たび)商人(あきんど)の胤(たね)を宿して、女の子を生んだ。父親が怒って嬰児(あかご)を里子に出して終った。娘は気が違って淵に身を投げて死んだ。父親は家をたたんで他国へ行っちまった。その家と墓地を無代同様に買ったのが、温泉宿の主人で、墓地のそばに温泉が湧いているもんだから、墓地を取り払って宿屋を建てたんですな」
「ははあ。幽霊の出る下地はありますね」
「実際、何か出そうな陰気な家でしてね。建ててから二十年近くになるというから、家も傷むでしょうが、天井を見れば雨の汚点(しみ)だらけ、廊下を歩けばミシリ、ミシリ軋(きし)むんです。以前そんな悲劇があったし、家が家だし、幽霊が出たって不思議じゃないんだから、女の幽霊があらわれるの、嬰児(あかご)の泣き声がするの、とそんな評判が立つと、世間には物好が多いから、こいつァ面白い、嬰児の泣声なんざ、聞こえなくってもいいが、別嬪の幽霊にはお目にかかりたいもんだ、というわけで、温泉の効果(ききめ)なんかどうでもいい連中が、どしどし押しかけて行く」
「ほう。出ますか。幽霊」
「へへッ。出るもんですか!」
「出なくっちゃ、お客が承知しますまい?」
「承知するもしないも、宿屋の方では、別嬪の幽霊がサービスを致しますから、御入浴にいらッしゃいなんて、言ったわけじゃなし、広告したわけではないから、幽霊が出ようと出まいと、知ったことじゃありませんよ。お客は大抵田舎の人たちだから、幽霊が出なければ、日が悪いと思って翌朝帰る。気の長いのは泊り込んでいる。お蔭様で客のなかった宿が、満員の盛況です。逆宣伝も巧く当るとこの通り。幽霊が出るとか、嬰児が泣くとか、噂を立てさせて置いて、知らん顔をしている主人、頭がいいですな」
「ははははは」
「矢櫃平もその手ではないかと思うです。矢の根などが出るそうだから、埋蔵物か何か掘っている奴が、登山家よけの禁厭(まじない)に、地図が白紙になるなんて、途方もないことをね」
「なるほど」
「自分で経験しないことには判らんけれども」
「それはそうです。経験といえば、今度の旅行で私は実に奇怪な現象……というか何というか……あなたの言葉ではないが、これだけは自分の経験だから、実際なんです。四万(しま)温泉から三国街道をぬけるつもりで、入込んだ雨見山(あめみやま)の谷。道には迷うわ、日は暮れるわ、谷間を彷(さまよ)うていると、山の斜面に朽果てた山小屋があったから、野宿する気で入込んで、寝ちまいました」
「ふむ」
「夜中に目が醒(さ)めると、何でしょう。宵会の座敷で芸者が、三味線ひいて唄い騒ぐような賑やかな物音が、真暗い谷底から聞えて来るじゃありませんか! この山奥に料理屋でもあるまいし、不思議に思って聞いているうちに、賑やかな音はパッタリ絶えてしまった。私もまたウトウト眠りました。翌朝やっとのことで、三国街道へ出ました。一軒の掛茶屋(かけぢゃや)に寄りますと、夜半の一件を思い出したんで、茶屋の爺さんに話したところが、私が迷込んだ雨見の谷は、三十六年前までは炭焼部落だったそうで、炭焼男を客に、越後三俣(みつまた)の美人が五人、谷底に小さい紅燈(こうとう)の巷(ちまた)をつくっていたが、大雪崩で家は潰れ、彼女たちは惨死した。私が闇の底に聞いた三味線や唄声は、女たちの亡霊がなす業だろうというのです。話を聞いてからゾッとしましたよ。ははははは」

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2012年3月31日 (土)

日本初の女流探偵小説家・大倉燁子(おおくら・てるこ)
幻の長編小説『殺人流線型』
※古書だと数万円!
紀伊國屋BookWeb、ソニーリーダーストアで発売です!

日本初の女流探偵小説家・大倉燁子(おおくら・てるこ/1886-1960)の長編小説『殺人流線型』が、いよいよ紀伊國屋BookWeb、ソニーリーダーストアでも発売になりました!

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立読みは→こちらへ!

古書での流通価格は数万円します。

↓は1935年に刊行された柳香書院版の本文トビラ画像です。

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ストーリーは立読み版をご覧いただきたいのですが、最初からスピード感があり、やや唐突な感のある箇所もありますが、とてもスピード感のある作品です。
仮名遣いは現代に直してありますので、どんどん読み進めていくことができるでしょう。

昭和初期の雰囲気を堪能していただければと思います。

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2012年3月26日 (月)

『殺人流線型』
友人のネット古書店「くろねこ堂」さんでは

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私の友人でネット古書店をやっていらっしゃるくろねこ堂さんでは、柳香書院が1935年に刊行した大倉燁子著『殺人流線型』は現時点で70,000円となっています。

・くろねこ通信
大倉燁子「殺人流線型」(柳香書院)

同じ書籍でも、古書と電子書籍はまったく異質です。
この柳香書院版の価格にしても、あくまで古書としての価値なわけですが、逆に言えば、これを購入しても手に取って読むのはなかなか大変で勇気が必要です。
であれば、実際に読むのは電子書籍というパターンもあっていいかもしれません。

かつて、レコードなどは保存版と実際に聴く版を持っていたりする人がいましたが、そのように古書と電子が共存していくことができるかもしれません。

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2012年3月17日 (土)

大泉黒石 『人間廃業』
本日より紀伊国屋BookWeb、ソニーリーダーストアで発売です!
そして『人生見物』はボイジャーストア、hontoから発売!

本日より紀伊国屋BookWeb、ソニーリーダーストア他で、
大泉黒石(1893-1957)著『人間廃業』が発売となりました。

Haigyo

立ち読み版は→こちらから

圧倒的な語り口で紡ぎ出される文章。貧乏のどん底で繰り広げられる人間活劇は、ニヒリズムをベースにしながらも抱腹絶倒、まるで古典落語のような面白さ。
本書は大泉黒石の著書の代表作の一冊です。
是非、立ち読み版をご覧いただければ幸いです。

また、ボイジャーストア、hontoでは同じく大泉黒石の
『人生見物』も発売となっております。

Kenbutu

立ち読み版は→こちらから

黒石と友人が、釜山からハルピン経由でシベリアへ。行く先々で巻き起る騒動とともに、大正年間における日本のシベリア出兵という騒然とした世相がくっきりと浮かび上がります。
こちらは来週23日より、紀伊国屋BookWeb、ソニーリーダーストアで発売となります。


── 志木電子書籍からのお知らせ ──
あなたのブログや原稿を
元カッパ・ブックスの編集者が
電子書籍にいたします!

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2012年3月 6日 (火)

大泉黒石著
『人 生 見 物』
著者略歴&立読み版

書名: 『人生見物』
価格: 420円

Kenbutsu

著者: 大泉黒石(おおいずみ・こくせき/1893-1957)
    ⇒ウィキペディア「大泉黒石

<<<<立読みコーナー>>>

立読み版は、本文の2章に該当する「二」の冒頭部分です。
PDF立読み版の下に、テキストの立読み版もあります。
※PDF版は画面左下「Scribd.の右隣りにあるアイコン[view in fullscreen]のアイコンをクリックすると拡大されます(画面を元に戻す時には、[Exit Fullscreen]をクリックしてください)。
文字は画面下の「+-ボタン」で拡大縮小します。ただしリフロー(スクロールしないで画面の範囲内で文字拡大していくこと)はしません。

<<<各電子書店へのリンクは左サイドにあります。書店と端末ディバイスの対応表をご確認の上、書店をお選びください。>>>

人生見物_立読み版


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【立読み版】

人生見物

大泉黒石

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   二

 アルトール・ショーペンハウエルの動機説(エテイシエレグルンド)によると、俺みたいなつむじ曲がりの男が時々鳴動するのも矢張り虫の精だそうだ。岩蛸の忠告には無頓着で小田巻立春斎に鳴動してやった訳はこうだから、勢い、親方の家に居るわけにもいくまい。当てはないけれども出て行こうじゃないかと言うと慌て者の万之助が、待っていましたと言わぬばかりに「痛快痛快。小田巻風情の没分暁漢(ワカラズヤ)にコキ使われるような手の筋は持ちませんと言ってやりゃよかった。出て行くなら一刻も早い方がいい。親方が戻ると面倒だからなア」と一人で勇み立ちながら、硯に墨を摺るのだ。何をやり出すかと思うと、貸本屋から借りた「義士銘々伝」の上表紙に『一筆啓上、長々お世話になったる我等両人、時来りて今日立ち退き申す。両人出世の暁には昔日の恩義に酬ゆるべく、別れに臨み固く誓い申す者也、御機嫌宜敷、伝兵衛殿』と書き殴って、仏壇の正面に押し立てた。そして「君、これでよかろうじゃないか」と言った。いいかも知れないが、親方に読めるかしらと心配すると、それだから君、このとおり平仮名さ、と澄ましていたが、大袈裟な男だ。万之助とはシベリアで別れたきり会わないから、平仮名の文句どおりに、昔日の恩に酬いたかどうか知らないけれども、親方の家を出ると間もなく、親方のことなんか曖気(おくび)にも出さないほど当てにならぬ万之助のことだから、本気にして待っていようものなら、とんだ馬鹿を見るのが落ちだろう。岩蛸が見たら噴き出すかも知れないと思いながら、ビール箱の家を出た。出た足で三河島の屠牛場へころげ込んだ。
 こう言うと、俺たちの親兄弟が牛の皮でも剥いでいるように聞こえるから、その辺の消息を明らかにする必要がある。けれども三年前に一通り書いた『俺の穢多時代』がそれだ。も一度くり返してもいいが、書けば穢多という言葉が出る。大泉黒石ともあろうものが、法律で禁じてある言葉を平気で使うとは何事だ。挨拶の次第によっては覚悟があると、三年前に水平社仲間に脅かされて面食らったこともある。親代々の水平ではないが、貧乏のお蔭で社員に選挙される資格は充分あるつもりだ。それ程馴染みの深い俺は何でもご承知だ、挨拶の次第によって肉切庖丁でも持ち込まれちゃ大変だから、屠牛場時代の話はやめた。折角だが今度もやめる。そして屠牛場からシベリアへ駆け出そう。シベリアへ行くならつてがあると万之助が俺を誘ったなんて先刻も言ったが、そういう事情で、出発の支度や路銀の工面をつけると大正七年十月がやって来た。これでは余りあっけないだろう。この節地方へ行くと俺は間違って文豪の候補者扱いにされるのだ。折角の好意なら候補者なんて心細い。何故いきなり文豪にしてくれないのかと思っているくらいだから、気の利いた立志伝の作者を見つけたら、この辺の記述を一つこういうふうに書いて貰おうと思っている。即ち「ナポレオンの望みなしと雖(いえど)も、後年に到って文豪の疑いある大泉黒石は、この時悟るところありて牛殺しの鉄の棒をガラリと投げ捨て、手足の血糊を洗い落として屠牛場を立ち去り、颯爽たる姿を東京発下関行三等の隅に現せり」と、このくらい誇張しないとやり切れぬ。その夜行列車のベンチに、相棒の万之助と二十四時間座っていたら、下関駅に着いた。赤い電灯のついている賑やかな地下道をぬけて桟橋へ出ると、真っ暗い足場を押したり押されたりしているうちに、関釜連絡船百済丸の下甲板へ出た。出たかと思うと、今度は忽ち荷物艙みたいな所に放り込まれた。田舎芝居の桟敷より窮屈で暗くて南京虫臭い畳床が、両側二段に仕切られている。愚図愚図していると満員になりそうだから、争って割り込んだ。靴と下駄を枕に、ひと先ず横になって落ちついて見た。何のことはない古箪笥の抽斗(ひきだし)から首だけ持ち出している形だ。明日の朝までこの穴の中に逼息(ひつそく)していなければならないとはウンザリだねと言うと、かりそめにも朝鮮へ渡ろうという者が、今から悲観するようじゃ仕様がないよ、と万之助が言った。その癖、波が少し高くなって船がゆれ出すと、真っ先に蒼くなったのがこの男なんだ。かりそめにも朝鮮へ押し渡ろうという者が、今からその有様じゃ、先が思いやられるなア、と言い返してやると、どうもこの、船なんて奴は僕の性に合いかねると見えて、このとおり頭がグラグラする、吐きそうだと弁解したもんだ。その弁解に付け加えて、何しろ海へ乗り出すのはこれが始めてなんだと言った。そして、船室を出ると翌朝まで降りて来なかった。甲板の上を夜っぴて歩きながら、玄海の波に落ちて砕ける星の光が、一つ一つ減っていくのを待っていたのだそうだ。黒み渡る山と山との間に、長っ細いトンネルみたいな釜山の桟橋の影を見ると、足をバタバタやって喜んだのだそうだ。そんなことは知らないから、一人でも減ると助かると思ってウンと手足を伸ばすと「痛い!」と怒鳴って跳び上がった奴があった。見ると、今しがた、荷物の陰に転がっていた朝鮮人の「チゲクン」が、いつの間にか万之助の席へ辷り込みに来ていたのだ。暗くてハッキリしないが、鼻はペシャンコで頭の裏が崖みたいな男だ。この朝鮮のオビンズルさんが、脾腹を押さえて顔を顰めながら、今にも俺に掴みかかりそうな権幕だから肝を潰した。
「どうしました?」
「あんたが私の腹を蹴ったんだ!」
「痛いかね?」
「痛い痛い」とまた脾腹を押さえ直したから俺が蹴ったんだろう。こんなときは大急ぎで詫るに限る。俺が喫いかけの金蝙蝠(ゴールデンバツト)を床の上に吐きすてて起き直ると、朝鮮のオビンズルさんがいきなりパッと拾い取った。そして旨そうに、スパスパと喫(ふ)かそうというのだから、拍子がぬけて気の毒になった。だから一箱分けてやると、もう脾腹の方なんか、どうでもよろしいといった格好だ。ニコニコと笑顔をつくって「どうも有り難う。あんたはどこまでいらっしゃるか」なんて覚束ない日本語で、反対(あべこべ)に挨拶した。おかしな男だ。俺がシベリアへ行くのだと答えると、オビンズルさんは目を丸くして言うのだ。「それは、あんまり遠いですなア。私の田舎の郭山(かくさん)でさえ、雪が降ったと言いますから。シベリアはもうよっぽど積もっていましょうなア」そこで俺が聞いてみた。「朝鮮はよく知らないのですよ。郭山てどの辺です?」すると彼は答えた。「定州(チヨンジユ)の一つ先きです」「その定州がわがらん」「明後日の朝、そこを通りますからご覧なさい」と彼が笑った。成るほど明後日の朝になると、郭山に着いた。禿地の真ん中に背負い投げを食ったような不景気なステイションがあって、オビンズルさんの兄弟みたいな朝鮮人が、プラットホームに固まりながら、物欲しそうな目つきで、汽車の窓を眺めていた。ここに十分間停っていると、釜山から乗り合わせた出征兵どもが、あんまり退屈なもんだから、正宗や弁当の食いかけを、窓から突き出して揶揄ったもんだ。おい! ヨボ! これをやるから、汽車の尻を押せやい! すると五、六人のオビンズルさんが線路へ躍り込んで、列車の尻を必死になって押した。出征兵どもが拍手喝采する。列車はビクともしない。弁当の食いかけはお預けだ。オビンズルさんは悄然として引き揚げた。駅長が笑っている。日本の兵隊は酷い悪戯をするものだと思ったが、この尻押し連の中に、下車したばかりの船友もいるんだから感心したことがある。この船友のオビンズルさんが万之助の席へ割り込んで、殆んどひと晩一人で饒舌ろうと言うのだ。眠くはあるが、眠ると南京虫にやられそうだから、無闇と煙草を喫(ふ)かして話を聞いているうちに、鼻の穴が笹子のトンネルみたいに真っ黒くなった。オビンズルさんの言うことは、よく解りかねるけれども、何だか一人の兄貴があって、この兄貴と郭山の田舎から釜山港へ出て来たらしい。そこで誘拐屋にだまされて、九州若松近在の石炭山に嵌められた。もっとも誘拐屋の手にかかって日本へ渡る朝鮮の労働連は、毎日八百人もあるそうだから、その組だろうと思って謹聴していると、つい二、三日前のことだ、五十人ばかりの坑夫がセッセと石炭を掘っている第何号かの坑に火が入った。空気を早く絶たなければ、何万か何十万の損害になるので、係の役人が、坑夫ぐるみに坑口を密閉したのだそうだ。火が消える時間を見計って、坑の口をあけると、五十人ばかりの坑夫が、坑の扉口まで這い寄ったまま、黒焦げになっていた。その中にオビンズルさんの兄貴がいたのだそうだ。俺も大抵のことはやったつもりだが、まだ坑夫の経験はないから、随分乱暴な真似をするもんだと、心中大いに驚いた。オビンズルさんの兄貴は何万円か何十万円かの、犠牲の一人になって焼け死んだわけだから、慰謝料の千や二千は寄越したろうと聞いてみたら、坑の大将が黙って十円札を一枚くれたと言った。粗末な命だ。それでは旅費にも足るまいと言うと、「全くです。郭山へ着くとお終いになります。でも日本にいるよりは安全です」と悲しげに呟いた。あんまり可哀想だから釜山へつくと、電車道のちっぽけなカフェーへ連れ込んでやった。万之助が陸軍省に勤めている知合いの役人から貰った金を二分して、旅費を差し引いても、この男を喜ばせるのに差し支えはないと思うから、朝飯を奢ってやるがどうだいと、船の下りぎわに万之助と相談すると、それもよかろうと言った。そのカフェーは三角路の釜山郵便局と向き合っている。後ろは街で前は丘だ。丘の上に憲兵分隊の看板が立っていた。卓子(テーブル)に腰かけて窓の外を眺めると、白衣の朝鮮人が桶を担いだり車を押したり、ウヨウヨ通る。粥の椀を抱えてツルツル啜りながら、天狗の団扇みたいな煙草の葉を売っている爺さんがいる。見すぼらしい電車がやって来ると、砂ぼこりが立って、煙草の葉が真っ白くなる。腰から下がひどく冷えるから、成るほど朝鮮は寒いなアと言いながら、万之助を見ると、いつの間にか手も顔も洗わずにパンを噛っているのだ。オビンズルさんがナイフを持って俺の合図を待っていた。だから、サア遠慮なく平らげてくれたまえと言うと、石のように固いパンを一分間で食いつくした上に、バタの皿を舐めてしまった。よっぽどひだるいのだろうと思った。「も一つ何か注文したまえ、ライスカレーがいいだろう」と俺が言った。するとオビンズルさんは、海老のフライにしましょうと言った。万之助がパンの中から驚きの目を見張って俺を見た。その海老のフライを片づけてしまって物足りない様子をしているから「も一つ注文したまえ、今度はライスカレーがいいよ。海老のフライなんぞ、いくら食ったって腹にこたえるもんじゃない」と言った。つづけざまに高い海老を食われてはたまらない。万之助が妙な目付きでまた俺を見るから、ハハア、奴さんヒヤヒヤしているのだと思いながら朝飯を片づけた。連絡車に乗ろうかひと休みしようかと、万之助が言い出した。こんなに疲れているから次の汽車にして、酒でも飲もうと俺が発起すると、すぐ賛成した。これからが不思議なんだ。オビンズルさんとは、カフェーの戸口で別れることにきめた。「大層にご馳走さまでした。ご機嫌よろしゅう」と朝鮮人がステイションの方ヘスゴスゴと出て行くのを待ち構えたように、万之助かムッとした表情で「おい君!」と言うのだ。「君は何だって、あんなヨボの野郎に、無闇と物を食わせるんだい?」だから俺はこう言った。「いいじゃないか、お互いさまだ」ところが万之助はますますムッとして「よかないよ!」と怒鳴った。「僕等は未だ他人(ひと)の世話を焼くような身分じゃあるまい!」

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