「テレビ帝国の教科書」 ボイジャーストアより発売!
先日来、ご案内しておりました、
書名: 『テレビ帝国の教科書 メディア・ファシズムの罠を見抜け!』
著者: 岡庭昇(元TBSドキュメント・ディレクター)
価格: 500円(税込)
がボイジャーストアより発売となりました。
以下は、「はじめに――メディア・ファシズムとの共犯を断ち切れ」からの抜粋です。
イヴァン・イリイチは、『学校化社会からの脱却』を著して、現代市民社会における学校化現象を批判し、そこからの脱却を提案した。それにならっていえば、わたしは早急なる“テレビ化社会からの脱却”を提案したい。“テレビを消せ”などという、つまらないお説教をしたいのではない。テレビを消しても、どうにもならない。逃避を試みても、その社会の内側に囚えられているという現実からは逃げられない。学校化社会からの脱却が、何よりも学校のホンシツと、学校化現象に蝕まれた市民社会への批判的な考察であったように、われわれはこの脱出のためにこそテレビに積極的に関わってみなければなるまい。
この考察は四つの軸をもっている。
①は、テレビが(メディア・ファシズムが)しばしば武器として用いるスキャンダルは、どういうカラクリに充ちているのか、という問いである。この考察こそ本書の柱であり、ロス疑惑やかい人21面相を例にとりながら、第Ⅰ章にまとめた。
簡単にいえば、テレビが送り出すさまざまな現実像のなかに、その一種類としてスキャンダルがあるのではない。すべての映像がスキャンダルである。あるいはすべての映像をスキャンダルとして処理するところにのみ、テレビがテレビとして成立している根本がある。そして、このようなものとしてのスキャンダルは、かならず権力悪としてのスキャンダルを背後にかくす役割をはたすのである。ちょうどテレビの送り出す明るい日常現実像が、現実の暗部を差別的に切り捨ててしまう役割であるのと、それはセットになっている。もっともらしい現実(NHKニュースのなかの市民社会)は、じつはさりげないイベントなのだが、それをホンモノに見せるために、もうひとつのどぎついイベントであるスキャンダルが演出されるのである。そこにマジメ=ホンモノ、不マジメ=ウソという迷信的二元論が交錯して、イベントとしてのニュースを現実像に粉飾することになる。
②は、テレビとはそもそもいかなる存在なのか、というホンシツ論である。このホンシツ的なメディア考は、なるべくホンシツ論議らしからぬ日常的なエピソードとして、第Ⅱ章にまとめた。
ホンシツなどとは無縁なところに存在していることによって、ホンシツ的な批判から免れている(テレビへの悪口にロクな批評があったためしがない)のが、テレビのホンシツだからである。
かくて、メディア・ファシズムの定義は、テレビをはじめとするマスコミが、用意した“像”をもって現実をフィクションする機能である、ということになろう。これが③である。この考え方については、第Ⅲ章で述べた。
そしてスキャンダルもまた、ニセのスキャンダルによってかくされている。われわれがふつうスキャンダルと思っているものは、スキャンダルをかくすためのそのニセモノなのである。つまり、
④メディア社会は、すべてが逆説のカラクリに充ちていて、素直なヒトほどだまされてしまう。このカラクリの見抜き方を、第Ⅳ章でしめくくった。
一般的に現代は情報化社会といわれる。むろん情報化社会とは、情報が不自由な社会のことである。ウソの情報ばかりが意図的に氾濫させられ、真の情報がかくされる時代の呼び名なのである。ここをまちがえてはいけない。だが、いかにわたしががんばったところで、たれ流されている大量のウソ情報の代わりに、ひとつひとつ真の情報を提示するなどということはできない。情報はいつも権力に所属し、その手によってかくされている。ただ、あらわれた限りでのフィクションとしての情報を読み替えることはできる。
娯楽番組をやるときは笑顔で、ドタバタヴァラエティをやるときは純粋に不マジメな態度で、そしてニュースを報道するときは表情をひきしめて……というのがテレビの、よく考えてみればじつに奇妙な、グロテスクなしきたりである。そして、ホンシツをいえば、マジメな顔のニュースほど、じつはつくりものであり、しばしばウソッパチでもあるのだ。人々は多く、メディアのトリックであるところの“ヒトの態度がコトのなかみを決定する”というしきたりに慣らされてしまっている。そのためおふざけ番組は俗悪で、マジメな顔のニュースは真実だと条件反射する。しばしば条件反射が充たされないときは、やみくもにテレビに向かって反発する。なぜしきたりどおり、永野の死体が病院に運ばれたあとの“現場”をニュースしないのか、という程度の意味しかもたない抗議電話はこのわかりやすい例である。
たとえば、いっけんぶっきらぼうな態度だが、とりあげていることがらへの真摯さがその奥にうかがわれる、というのはだめで、みるからに虚偽のとりつくろいで、対象に関心をもっていないマジメ風ないんぎん無礼は、大いに歓迎する。その結果、たとえば多くのNHKアナウンサーのような不気味な存在が出来上がってしまうのである。
この逆立ちは、視聴者自身にはね返っている。“ヒトの態度がコトのなかみを決定する”という錯覚によって、大マジメな顔の情報は(記者クラブ発表のニュースは)それだけでホンモノだとうけとられる。やすやすとフィクションが流布される。大マジメな顔のアナウンサーと大マジメな顔の視聴者がメディアと共犯しつつ、物語を現実にすりかえる不マジメな作業にうちこんでいるということだ。
さきほどもいったが、まさにあなた自身の問題として、いま、ほんとうに深刻にこのメディア・ファシズムの状況をふり返ってもらいたい。オレは何もしていない、ただ新聞やテレビから情報を与えられているだけで、そこにウソや物語がふくまれていればオレも被害者だ、というかもしれない。それもたしかに一面の真理だ。だが、一方的に被害者ではすまないところに事態がきていることもたしかなのである。
この、くるところまできてしまったメディア・ファシズムの頽廃のなかで、なお“ただ与えられている”としたら、それはとりもなおさず共犯以外のなにものでもないのである。メディアほど受け手(消費者)の顔色をうかがっているものはない。わたしは従来つねにテレビ、新聞、週刊誌のつくり手を批判してきたし、これからもやってゆくつもりだが、近年“王様”としての視聴者“市民”の犯罪性を痛感することが多い。
読者諸君、いますぐあなたの位置を徹底して検証せよ。そうでないと、とりかえしのつかない事態をあなた自身の手でつくり上げてしまうことになるだろう。
個人的な感想を言わせていただければ、上記の抜粋の最後の部分「とりかえしのつかない事態」は福島第一原発の破局事故で起きてしまったと思います。
しかし、それでもなお、政府やメディアの流す「福島は収束しつつある」という情報(あるいは「空気」)をアプリオリに信じてい国民が圧倒的に多数であることも事実です。
しかし、だとすると、岡庭論に従えば、さらにさらにとてつもない事態が起きてしまうかもしれません。
それを避けるためには、今こそ情報を正しく読む力をつけることが必要です。
本書は必ずそのお役に立てるものと確信しています。
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