『週刊岡庭昇41』 ~ 虚無国家ニッポン。
少し間隔があいてしまいましたが、『週刊岡庭昇』、その41、「虚無国家ニッポン。」をお届けします。
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週刊岡庭昇 41 ~ 虚無国家ニッポン。
(2011.9.20記)
散歩の途中、窓に向かってビル一階の椅子に腰掛けでいるわたしの前を、若い母が通り過ぎる。赤ん坊をおんぶと反対に首から下げている。霧のような淡い雨だが、間違いなく黒い雨が降り続いている。母親は傘もささず、乳母車なら辛うじて備えている屋根さえない。ちょっとわたしはびっくりするが、まだ暑い季節が続いているから気にも留めないのだろう。だがむろん、福島第一原発の爆発から半年、事態は何も換わっていないことは明白だ。
どうしてこんなにむちゃなことをするのだろう。まさに実存としか形容出来ない一幅の絵である。なにもこの若い母を叱るわけではないが(そんなおっせっかいをするには、この国には絶望し切っている)、ちょっと報道を締めてある問題の露出を避ければ、事実は立ちどころに存在しなくなってしまう。例によって例のごとし、である。これほど操作しやすい「国民」もあるまい。
昨日は原発爆発担当大臣が、冷温停止状態という目標は対策が進み、年内にも問題が解決するような演説をIETAで行った。またもペテンか? あてのない解決を、言い続けることが政治なのか。しかしペテンを前提にして、原発周辺の住民を家に返そうとする欺瞞に連続するのだから、放って置く訳にもいくまい。
現実に触れないようにする操作と、ばらまかれるペテンの組み合わせ、それに嫌なことは極力忘れるように努める国民性との三位一体で、肝心な事実はいつものように雲散霧消する。あらゆる対抗理念の試みは挫折し、江戸時代はすっかり蘇った。不満を持たず従え。さすれば自分だけは救われる……。
東電がすっかり増長して、被害者である国民に加害者たる自己の尻拭いをさせて平然としているのも当然なのかも知れない。加害者が被害者に事態の責任を負わせている端的な例は「節電」協力、正しくは強制である。暑い8月、近所の旨いコーヒー喫茶店は、「ギンギンに冷えてます」と謳って心意気を示したが、いつのまにかその看板を取り下げた。彼は何も言わないが例の文法、身近の人々や業界の、あれは「やっぱり」まずいよ、「この際だから」という情緒的な圧力があったことは容易に伺えるのだ。そうやっていつもこの国では、誰が悪いのかが問われることはない。すっかり安心してるだろ! 戦犯=原発=東電さんよ。
2011.9.17の『東京新聞』朝刊の『こちら特報部』は、戦犯=東電のさらにつのる傲慢さを教えてくれる。「見出し」だけで、どんなに傲慢か分かる。
《東電 反省ゼロ/「知的財産守るため」/事故対策手順書 真っ黒/節電感謝 社長の姿なし/無神経な強気/値上げ武器 再稼働迫る/識者「まず総括原価方式変えよ》
説明の必要はあるまい。恥知らずの開き直りに、つける薬などありはしないのである。そういうものには「解体」を希望するしかないのだ。
2011.9、震災半年の時点で、福島第一原発爆発の隠された秘密のうち、明らかになった事実は大きなものに絞っても三つある。いずれも民衆が怒って、革命騒ぎになっても不思議ではない「秘密の暴露」だが、この国では不愉快な「おインテリさま」が、自己のナルシズムを満足させるための正義の表出(というイベント)がせいぜいのところである。それは決まって抽象の正義であって、AC共同広告機構と同じ代物なのだ。
2011.9までに露出した、政府=東電のデマゴギーは無数にあるが、決定的なものはいま言ったように三つある。すなわち福島第一原発が爆発以来、垂れ流して来た放射能の総量はヒロシマの39.6倍に達しており、しかもその被爆からの立ち直りがヒロシマの場合年1000に対してフクシマ原発の場合20と比較にならぬほど深刻であることが一つ。なかでもセシウムの場合、フクシマはヒロシマの400倍である、というのがその2である。そして被災当初、原発が適切に任務を果たしていれば、爆発は起きなかった可能性が具体的に調査で明らかにされた、というのがその3である。
どれも大変な事実であり、原発そのものの存続において致命的である。原発再開論など、意見の違いも何でもなく、ためにする悪党の言い草にすぎない。こんな失態が明らかになっても、虚偽を続けてきた政府=東電はなお恬として恥じず、実際上帝王だと言われる東電会長は逮捕は愚か、辞任さえしない。この奇妙極まりない奴隷のおとなしさを必然しているのは、何よりも民衆の側の「いくら批判しても、所詮は原発がなければやっていけない」という日本型メイファーズである。しかし一体誰が、そんなことを決めたのだ!
実は財界=政界=マスコミによるスタート時点での、未来学的な蒙昧と楽天を引き摺った、根拠なき原発必要悪論こそが欺瞞の根源である。原発必要悪説を断固糾弾せよ。そんなことは刷り込まれた虚構で、ちっとも自明ではないと知るべし。
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